コンテンツのはじめに・・・ 十二国記シリーズは講談社より発刊されている作家/小野不由美氏による一連の作品群です。 *個人サイト『にゃおんの休日』に於ける当コンテンツは管理人個人が私見/私文を連ねている非公認のファンコンテンツです。 *<<警告>>以下は原作からは異なり、管理人の推測・想像で描かれた2次作場面です。
■■■ 十二国お題 演習編 ■■■
− 飛仙 − 「おはようございます。久し振りですか、主上」 「ああ、おはよう。剣の素にからかわれてな」 慶国金波宮、朝。 賢王と人々から慕われているその人が、ぼさぼさの髪もそのままに寝床で半身を起こしたままぶすったくれている。 「ほっほっほ、油断なされましたか」 「まったく。気の抜きようがないわ」 憚りなく大あくびを1つ。もとより、あまり寝起きはよろしくない。 「それにしては随分楽しそうですが」 「そう見える内は問題なかろう」 整えれば見事であろう髪の毛をがしがしと手荒く指でまとめて背後へ流し、面倒くさそうに、しかしむすっとしつつも気合いを入れて床へ足を下ろす。 「太陽が黄色いわ」 「はぁ。左様にございますか」 「今日は隣の尚隆が来る。同席してくれ」 「わかりました」 −妖力甚大なる妖魔を滅する代わりに封じ、剣となして従える− 朱旌達が語る小説に乗って市井に伝播し仁徳溢れる御方と崇められる王、さぞや自律自戒に満ち満ちた精進生活振りかと思いきや、そんなことはない。 「寝床でまで格好つけて居られるか」 「ほっほっほ、民は主上を誇りに思い敬愛しているのですよ」 「今年は豊作になりそうだな」 「おかげさまで」 「私が耕した訳ではないぞ」 「ほっほっほ」 朝議から戻って略礼装を解き、執務室に入ると今日の決裁を始める。 さかさかさかっと筆が走り、こんっと御璽が捺され、くるくると書翰が巻かれる。さかさかさか、こん。さかさかさか、こん。と唐突に、ばさばさと以前の綴りを漁る音が混じり、次にがらがらと古い竹簡が勢い良く広げられる。 「見に行く余裕はないし」 シャン。 佩いていた剣を抜き、濁りのない刀身を目の前ですっと見極める。 席に座る。ふぅっと息を吐く。 「現在の、紀州、南部」 刀身は淡い水色の光を放ち、王の心の望む場所を映す。 里の様子、田畑の様子、堤を、河を、上流の山々を。 「ふむ」 元の透明な光を宿す刀身を鞘に戻し、再び筆を取る。 「お茶の時間はまだですかな、主上」 「早いな。いや、私が手間取っているのか。今日は寝起きが悪かったからな」 「それはいつもの事です。剣が暴れようと暴れまいと主上の寝起きの悪さは殊の外。 主上の寝起きだけはご勘弁をと女官達が言う程です。拙が毎朝伺候するのは、」 「松伯」 筆を宙に止めたまま、王は苦笑いで話を遮る。 「ほっほっほ、延王君がご到着ですよ」 「彼奴は遊びの話の時だけは定刻通りにやって来る。政務はちゃんとやってるのか?」 「ほーっほっほっほ。水鑑刀でご覧になりますかな」 「なんでそこまで見てやる必要がある、いつまでも雛のままでは置かんぞ。彼奴にはどっさり貸した借り、 丸ごと利子付けて返してもらうつもりだからな」 「それはまた、長い約束になりそうですな」 ---- 書き始めた時は、お題「剣と呪具と」に向かって書いてたのですが筆は思うように転がりませんでした。もったいないのでここに使ってしまった。・・・「飛仙」、こんなハズじゃなかったんです。