コンテンツのはじめに・・・ 十二国記シリーズは講談社より発刊されている作家/小野不由美氏による一連の作品群です。 *個人サイト『にゃおんの休日』に於ける当コンテンツは管理人個人が私見/私文を連ねている非公認のファンコンテンツです。 *<<警告>>以下は原作からは異なり、管理人の推測・想像で描かれた2次作場面です。
■■■ 十二国お題 手慣らし編 ■■■
− 好きな場所は − 雲海の上には地上の荒廃が及ばない。宮中を彩る庭園は豊かな緑で変わらず人々の心を癒し続ける。本殿からやや勾配のある岩廊を登ると背後に小さな滝が流れていい感じに本殿から死角になる四阿がある。手の届くところに樹の枝が迫りこじんまりした天然の執務室にちょうどいいと時々やってくるのだ。 ことん、がさがさ。 文書と書簡を詰め持ち運び易いように作った簡易執務セットにお茶の入った水筒まで、用意万端ではある。 かさかさ。 懐からは少しばかり砂糖菓子。官府を出る時に朝士から差し入れに手渡されたものだ。ここで長居する気、満々に見える。 しかし気になっている文書を目の前に置くと一瞬にして表情は硬く厳しくなり、もう水筒も砂糖菓子の存在も忘れた。料紙に流麗な文字が記されて行く。 「芳と柳」 特に芳は極北の国、冬を越すのは想像を絶する厳しさである。まして自分は芳国に格別の思いが在る。だからこそ。料紙を改め更に連絡事項を書き綴る。そして次の書簡に手を伸ばし、読む。糸口は本当に必要なものは見落としは? ことりと筆が置かれる。 この国の朝にはゆとりができた。自分が緑の四阿で息抜きが出来るくらいに。なのに今日は居心地が悪い。水筒は重いまま、まして砂糖菓子を口にする気持ちなど起こらなかった。 「小司冦殿」 四阿の手前で朝士が1人礼をした。 「もう時間なのね。わざわざありがとう」 「お決まりになりましたか?」 「ええ。後は夏官府に頑張ってもらいましょう」 「ですが」 「やれないこと、やってはならないこともあるの」 「・・・」 「もちろん、手をこまねいているつもりはないわ」 遠く離れた国々へ、雲海の下からどれだけの事が出来るだろう。もう一度雲海の彼方を見遣る。 「官府へ戻ります」 ---- 祥瓊が官吏の道を歩むならどんな感じかなと想像しました。管理人の筆の迷いはいつものことです、はい。