コンテンツのはじめに・・・ 十二国記シリーズは講談社より発刊されている作家/小野不由美氏による一連の作品群です。 *個人サイト『にゃおんの休日』に於ける当コンテンツは管理人個人が私見/私文を連ねている非公認のファンコンテンツです。 *<<警告>>以下は原作からは異なり、管理人の推測・想像で描かれた2次作場面です。
■■■ 十二国お題 手慣らし編 ■■■
− 禁門にて − くるっくーこんこん 「んあ」 只今復興中の雁国、玄英宮の一角に延王が執務室代わりに使う一室はある。 さらりさらりと筆を走らせていた真面目な様子からはどうにもかけ離れた間抜けな声(?)がやり取りされる。 「おー綺麗な鳥じゃん」 「し!」 「(なんだよ?)」 金の鬣をぼりぼり掻きながら入って来た少年延麒は不審の眼で主を見上げた。 くるっくー 「よしよしご苦労さん。延王より、ご配慮痛み入ると伝えてくれ。ほれ」 不審の眼を意に介さず延王は、延麒曰く「綺麗な鳥」の喉元を軽く撫でてから胴体を後ろからわしっと丸抱えして「そら行けー」の如く窓から放り出した。 「あれって鸞じゃねーの?そんな適当に投げていいのかよ」 長椅子にぼんっと座って足を組む延麒を尻目に延王はごそごそ素早く着替え始めた。 「あれなら投げても平気だ。鍛えているらしい」 「へえ?」 衝立の上に無造作に王の衣装が投げ掛けられていく。 「鷹匠よろしく何やってるんだか、賢い奴の考える事はわからん」 「はぁ?」 分かっていない延麒を適当にあしらいながら衝立を出ると机案下から薄汚れた布袋を掴み出した。 「言ってる間に監査役が着くぞ。出会うのが雲海上だろうが下だろうが身ぐるみ剥がされるのは変わらん。俺は視察に出る」 最後に残していた書翰にぽんっと御璽を押すと巻き取りもしないで駆け出した。 「うわっ置いて行くかよ?」 「さっさとしろ」 2人で隠し通路に飛び込み最短距離で厩舎へ抜け出た。 気配で察し背を屈めたたまに鞍を乗せ荷物を縛る。 「よしよし、いい子だ」 たまを撫でて手綱を取る。 「でもよー『くるっくー』って何だよ、それじゃあ鳩じゃん」 「聞いたがどうやら俺宛の時だけ『くるっくー』とか鳴くのだそうだ」 「変すぎるぜそれ」 雲の高みにその頂を隠す凌雲山。その雲にも手が届く程の場所にすっきりと平らかに切り出された広い岩棚があり、奥には巨大な門扉が構えられている。王の居宮から下界へ直接降りる事が出来る、禁門。 「騎影です」 警備の兵卒達に緊張が走る。じっと息を凝らすこと暫し。 「黒のすう虞です」 「黒なら景王だ。他には」 「いえ、1騎のみです」 「随分と身軽、いえお迎えしなくては。王と冢宰に連絡を」 「はっ」 しかし黒いすう虞の足はとびきり速いらしく伝令が戻る暇はなかった。音も立てずふわりと大きな黒い獣の足が降りる。整列した警備兵が伏礼した。 「構わぬ、面を上げ、ん?」 重厚な音を響かせ門扉が開き始めた向こうに手綱を引く延王が現れた。 「げ」 後ろに隠れて覗いていた延麒が露骨に妙な声を出した。 「残念?」 「これは景王」 「延王、私の来訪を足蹴にしてどちらまで?」 「関弓の市場視察です」 堂々と応える。目が笑っている。 「私も是非ご一緒させて下さいますね。勿論、私の相手は延王あなたですよ」 有無を言わさずにっこり微笑まれる。 こうなったら答えは一つ。 「分りました、国家予算よりは安く済むでしょうから。では早速参りましょう」 押し負ければツキと復興黒字を持って行かれる。賢王同士、駆け引きはとっくに始まっているのだった。 ---- 延王、小遣いを犠牲に国家予算を守るの巻。両王そこまで治世は重なってなさそうですが。妖魔を剣に封じる達王には黒すう虞に乗って頂きたい所存。