−にゃおんの休日遊筆−
十二国記〜2次作文と2次絵

 驍宗様のお話『氷楔黎明の時』初稿公開日July/19/2004 最新更新日July/19/2004

コンテンツのはじめに・・・
十二国記シリーズは講談社より発刊されている作家/小野不由美氏による一連の作品群です。
*個人サイト『にゃおんの休日』に於けるこのコンテンツは管理人個人が私見/私文を連ねているオフィシャル非公認のファンコンテンツです。
*<<警告>>以下は原作からは異なり、管理人の推測・想像で描かれた2次作場面です。


双璧と謳われた片方は王に、他方は臣下に。
何れも知勇に優れ人望篤く次代を嘱望された御身。
双璧が崩れる時、すなわち他方は拮抗する反勢力と化す。
一国に両雄は立たぬ。
如何なる手段を以ってしても王は唯一、臣下を越えて王となる。
呑み込めぬならば、
大きく繁れる枝葉、深く伸びた根、互いに絡み合う脈の一方全てを抹消する。
双璧・・・これは、己と闘うに等しい。

*** *** ***


白圭宮正寝。
出立は明後日、早朝。兵力の配分は済ませた。補給路の心配はない。まだ必要な事は多いが、軍吏との話は今夜はもうできない。明日の執務時間からは忙しくなる。

「ここはもう良い。下がれ」
夜遅く、身辺を整える女官が衣装と飲み物を揃えて置くと一礼して立ち去った。
1日の政務の疲れを湯で落とし、ひと心地つく。人払いを命じた今日は、警護の兵も正寝の広間までしか立ち入らないでいる。しかし、
そろそろ来る頃だ。今日この時間にしなければならないことを1つ残している。

衝立の向こうに気配がした。来たか。
「李斎にございます。取次ぎもなく書房まで失礼とは存じましたが御要望の文書をお届けに参りました」
凛とした、女性としてはやや低めの声が聞こえた。
「入れ」
書机に向かって筆を走らせている王の姿は白銀の髪も下ろして粗く束ねた寛いだ衣装だが、近付くと筆を置いて迎える紅玉の視線は鋭い。正面に居住まいを正し改めて礼をとる。
「瑞州師中軍のだな、見せてもらおう。こちらへ」
命じられて頭を上げて立ち上がり、文書を持って主上の前に出る。
「どうぞ」
「うむ」
内容をあらためる間、李斎は起立したまま主上驍宗の手元を注視する。委細漏れはなかったはず。1つ1つ自身の目で見なければ納得出来ない緊迫した現況と、事実その激務を日々こなす類い稀なる王たる者の手。
「・・・」
王の手が文書の1点に止まった。何か取りこぼしたか。頭の中で様々な項目が思い巡らされるが心当たりがない。
「承州の兵站を瑞州から回しても厚くしておけ」
「は?承州でございますか?」
「そうだ。瑞州分を今より7割に落とし、承州各地へ分配しておけ。早急にだ」
「承知致しました」
「理由は問わぬか」
「お答え頂けますならば」
「じき必要になる」
それ以上の回答は得られそうにない毅然とした空気があったので李斎は質問を呑んだ。
「これは預かる」
見終わった文書を巻取り、書机の端にそっと置くと紅玉の双眸が李斎を見上げた。
「それでは私はこれにて」
「まだ用件は済んでいない。慌てるな」
後の言葉が聊か厳しく聞こえた。
書机を回り込み李斎の傍に立つと王は先程と同じ文書の文州の巻を手に取った。
「明後日出立すれば暫く戻れぬ」
発せられた言葉は覇気を抑えた静かな声だ。
目の前の王の気配に幾許の揺らぎもないが、余談を交わす時間でもない。
李斎は不思議に思った。
「私が戻るまでの間、泰麒を頼むぞ、李斎」
「はい、承知してございます」
王の表情に微かに苦笑が浮かんだように見えたがすぐに覇気にとって変わる。
「私は必ず戻る故」
「敢えて何を仰られますか」
見返した紅玉には自信が満ちており、言葉から連想した不穏な気配は感じられない。
「約束だ」
言うが速いか李斎の腕を取る力は強く素早かった。
敵ならば相対せようが王の行動に咄嗟に反撃を加える将軍ではない。何事かと思う。
「無事に逢いまみえたい。生き延びよ、李斎。如何なる手段を以ってしてもだ」
耳元に囁かれる驍宗の微かに掠れた声には気遣いが込められている。
背を強く抱き締める腕の震えは何を意味するのか。
腕が解かれた。閉じられていた瞳が開き隠されていた紅玉の双眸に対峙する。
「官邸へ戻るように」
解き放たれて改めて見上げる王はいつもの峻厳な覇気を纏っていた。

*** *** ***


約束の日はまだ来ない。しかし、我々は今この大地に立っている。
王の元へ繋がる白銀の戴の大地。
「今この荒廃も全ては王の手の中にあるのか」
十二国一と言われる極寒の地。刺し貫かれる程の寒気。風雪は容赦無く吹き荒ぶ。
「必ず参りましょう、台輔。王がお待ちなのです」

『氷楔黎明の時』−了−


**** **** ****
ついに描いて書きました「祝・十二国記初イラ描き初作文♪」
と、うかれている場合ではなくて。
夢打ち壊されたと思われた御来場の方々には申し訳なく思います。
その上さらに深刻に、絵デカイよ・・・。でもこれ以上小さくすると驍宗様の目線が解り難くなるのです。

とりあえず初驍宗様絵の目線、狙った通りに描けて良かった・・・。
「封魔」な雰囲気を狙いました。

さて、管理人には気鬱があります。
十二国での慶事には「黒色」が用いられますね。凶事は「白色」。
生まれた時から銀白髪の驍宗様は黒麒麟とは反対の様々な風聞もあったのではと思うのです。
十二国で最も気性の激しい戴国、その禁軍左将軍を務めるに至るまでの闘いが。
原作『黄昏の岸 暁の天』現在での戴国の惨状は逆賊阿選のみに起因するのではないのではと想像してます。

驍宗様には無事に玉座に戻って欲しいと切に願ってこの絵を公開します。

 || >>NEXT
(C) にゃおん 2004 (禁無断転載)

TOP
SITE MAP
にゃおんの休日掲示板